研究概要 |
われわれは本研究期間内に2つのモデル(ヒト食道癌移植モデル:Cancer Letters,2000;マウス大腸癌モデル:Int J Cancer 99:286-291,2002)を用いて黄連による癌悪液質改善作用を明らかにした。これらのモデルにおいて黄連はinterleukin-6の発現抑制を介し癌悪液質を改善することを確認している。しかしながら同モデルを用いて黄連とシスラプラチンめ相乗効果を検討したところ、癌悪液質の改善にもかかわらず十分な抗腫瘍効果の増強が得られず、この原因として用いた2つの薬剤の相互作用を検証する必要性が生じた。 上記を検証するためにヒト癌細胞8株に対し、シスプラチン、黄連とその主成分であるベル,ベリンに対する感受性をMTTアッセイにて解析し、DNAマイクロアレイデータに基づき、それぞれに関連する遺伝子発現プロファイルを作成した。このプロファイリングにより、シスプラチン感受性に関連する遺伝子発現と黄連のターゲット遺伝子の多くが重複しており、このターゲット遺伝子の重複が2剤の相乗効果を認めない一因であると考えられた(論文投稿中/日本癌学会総会発表予定)。また、黄連のターゲット遺伝子中にDNAトポイソメラーゼを認め、現在、黄連とDNAトポイソメラーゼインヒビターとの併用実験を行っている。 なお、この間にDNAマイクロアレイにおけるバイオインフォマティクスの整備を平行して行い(Lancet,361:923-929,2003;Oncogene in press)、現在、抗腫瘍効果における各成分と生薬黄連との相互関係をバイオインフォマティクスを用いて解析している。
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