研究概要 |
(本年度の研究結果) 我々は脊髄をそれ自体では障害を与えない程度の10分間虚血にしながらグルタミン酸を分節注入することで対麻痺を作成する実験動物モデルを用いAMPA/kainite受容体阻害薬であるNBQX,アスパラギン酸溶液を分節注入し対麻痺を作成した実験動物モデルを用いNMDA受容体阻害薬MK-801による脊髄保護作用を証明した.今回,現時点で有望視されているNMDA受容体,AMPA/kainite受容体阻害薬でかつグルタミン酸の遊離阻害薬、及びシナプス間陳のグルタミン酸再吸収薬としてALSの治療で現在臨床的に使用されているリルゾールを使用し脊髄保護作用をin vivoで評価した.本年度は,15分間の大動脈遮断による脊髄虚血モデルにおいてRiluzoleの分節注入による脊髄保護作用を検討した.A群は腹部大動脈を遮断直後にRiluzole(8mg/kg)を分節注入し引き続き50mMのグルタミン酸溶液を2ml/minの注入速度で大腿動脈カテーテルから10分間分節注入する.B群は生理食塩水をリルゾールのかわりに注入し続いて50mMのグルタミン酸溶液を同様に10分間分節注入した.C群では腹部大動脈を遮断直後にRiluzoleを注入しさらに生食を15分間分節注入する.対照群として生食のみを15分間分節注入したものをD群とした.手術後48時間後の下肢の神経学的所見はTarlov's modified scoreでA, C群がB, D群よりそれぞれ高かった(P<0.05).手術後48時間時点における脊髄標本でC群は対照群に比べ虚血性変化は軽度であったが残存する正常に思われる細胞数は統計学的には差はなかった.実験結果からリルゾールの分節注入による脊髄保護作用は,それだけでは不十分であるが補助薬としての可能性を示唆するものと考えられた.
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