表在性膀胱腫瘍は内視鏡的に治癒切除しうるが、その後の再発と再発腫瘍の悪性度の進行が問題となっている。従来、抗癌化学療法剤あるいは免疫賦活剤(BCG)の膀胱内注入療法が再発予防に用いられてきたが、約30〜70%が再発することが報告されており、さらなる再発予防法の確立は急務である。 Cyclooxigenase (COX)-2はCOX-1と共にプロスタグランディンの生合成に於ける律速段階の酵素であり、炎症などの刺激により発現が誘導されるisoformであることが知られている。炎症と癌の関係に注目した研究からプロスタグランディン生合成が癌組織で亢進していること、また、疫学的にNSAIDを高頻度に長期服用した症例では癌の発生率が低いということ、その原因の一つとして癌組織に於けるCOX-2遺伝子発現の誘導が膀胱癌を含む種々の癌で報告されている。そして、選択的COX-2阻害剤は経口で投与できることから従来の抗癌化学療法剤膀胱注入療法よりcomplianceが良く、まずは従来の再発予防法の補助的投与として臨床で用いることを当面の目標として研究を進め、以下の結果を得た。 1)COX-2蛋白の人表在性膀胱癌に於ける発現は内視鏡的切除後の再発を予見する可能性がある。 OOX-2蛋白の人表在性膀胱癌に於ける発現と癌の再発との相関を検索した。 表在性腫瘍でのCOX-2蛋白の発現を免疫組織学的に検索したところ、非再発症例より再発した症例の多くに発現が認められた。このことから表在性膀胱癌の再発にはCOX-2蛋白の関与と、この遺伝子発現のスクリーニングそのものが予後判定因子として用いうる可能性が示唆された。(in print) 2)床に用いる可能性のある薬剤の安全性と発育腫瘍抑制効果の容量試験をラット表在性膀胱癌モデルを用いて行い、その効果の機序について検索した。すでに動物実験は終了しており、現在組織学的および分子生物学的解析中である。Macroscopicには選択的阻害剤投与群において腫瘍の発育抑制効果が認められたが、最終結果としては組織学的検索結果を待つ必要がある。
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