(目的)声帯再生状況の長期観察と組織学的検討 (方法)ビーグル成犬10頭を用いて、大腿骨より採取した骨髄を培養、このうちシャーレの底面に張り付いた細胞のみを選択増殖させた。別の実験系によって培養細胞が中胚葉系幹細胞のうち造血系幹細胞を含まない間葉系幹細胞であることを確認した。さらに、この細胞を1%HClアテロコラーゲン内で3次元培養を試みた。うち8頭は、左声帯に1%HClアテロコラーゲン+間葉系幹細胞を、右声帯には1%HClアテロコラーゲンのみを注入し両者をそれぞれI群、II群として比較した。注入4日後および14日後に両側声帯正中を横切開し、声帯粘膜表層から内筋層に至る障害を加えた後、I群、II群の声帯の再生状況を喉頭ファイバーにより観察した。また残りの2頭は、右声帯は無操作のままで、左声帯にのみ上記と同様の切開を加えたのち、1頭は、左声帯に1%HClアテロコラーゲン+間葉系幹細胞を注入し、もう1頭は、そのまま放置し、声帯の再生状況を観察した。 (結果)I群はII群と比較して長期的にも良好な治癒機転が観察された。 (考察)1%HClアテロコラーゲンは間葉系幹細胞増殖に適切な足場となり、この中で増殖した聞葉系幹細胞は、障害された声帯再生の形態・機能有効に働くと考えられた。
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