研究概要 |
(13年の本研究の成果)13年の本研究でゼラチンザイモグラフィーではproMMP-2の活性化率が粘表皮癌は腺様嚢胞癌より有意に高値を示した。その理由として.粘表皮癌と腺様嚢胞癌においてMT1-MMPの産生は正常より亢進しているが両群間に差を認めず、また腺様嚢胞癌ではTIMP-2が過剰産生されており、MT1-MMPによるproMMP-2の活性化を抑制する可能性が示唆された。(14年の本研究の成果)免疫組織化学では粘表皮癌、腺様嚢胞癌ともにMT1-MMP, MMP-2,TIMP-2の組織内局在は癌細胞巣に優位であったが、粘表皮癌では癌細胞膜上にMMP-2が濃縮して観察されたのに対して、腺様嚢胞癌では癌細胞表面のMMP-2の局在は観察されなかった。またin situ zymographyでは粘表皮癌においてゼラチン分解が癌細胞巣に観察されたが、腺様嚢胞癌では組織内のゼラチン分解活性が微弱であった。13年の結果と合わせて考えると、in situ zymographyにおける組織内ゼラチン分解活性は活性化型MMP-2が担っており、粘表皮癌では癌細胞膜表面上でのMT1-MMPによるMMP-2の活性化が効率良く起こっているのに対して、腺様嚢胞癌ではTIMP-2の過剰産生がMT1-MMPの活性を阻害して癌細胞膜表面上でのMMP-2の活性化を抑制していることが組織化学的にも示唆された。本研究成果は現在投稿準備中である。(今後の展望)病理組織学的分類の違いによって癌細胞膜表面上でのMT1-MMPによるMMP-2の活性化に相違があり、MMP-2の活性化以外の要素によるマトリックス分解が浸潤転移に重要な役割を果たす癌が存在することが示され、MMP阻害剤の適応を考える上で重要なデータであった。このような基礎データを積み重ねることが新しい細胞外マトリックス分解酵素阻害剤による転移抑制の適応の決定に重要であると考えられる。
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