研究概要 |
(目的)舌扁平上皮癌に対するMMP阻害剤の効果をヌードマウス同所移植モデルを用いて検討した。 (方法および結果) 1.HSC-3-M3の細胞増殖に及ぼすMMP阻害剤の影響 HSC-3-M3の細胞増殖に及ぼすMMP阻害剤の影響をMTT assayを用いて検討した。培養液中のMMP阻害剤を1nMから100μMまで変化させ検討したが、MMP阻害剤による殺細胞効果は認めなかった。 2.In vitroにおけるMMP阻害剤のMMP-2,9ゼラチン分解活性抑制効果 ヌードマウスに移植した舌癌をホモジナイズ、遠心して得られた上清を用いてgelatin zymographyを行った。電気泳動後、TNC溶液に1nMから30nMまで濃度を変えたMMP阻害剤を加えた結果、MMP-2,9のゼラチン分解活性が濃度依存性に抑制された。 3.In vivoにおけるMMP阻害剤のMMP-2,9抑制効果 ヌードマウス舌への同所移植モデルを用いてMMP阻害剤による治療実験を行った。治療群と対照群の舌腫瘍をそれぞれホモジナイズしgelatin zymographyに供した。治療群と対照群のMMP-2の比は0.57:1、MMP-9は0.81:1、MMP-9の活性化率は0.21:0.36であり、MMP-2,9の発現抑制、MMP-9の活性化抑制効果が認められた。 4.MMP阻害剤の腫瘍組織内ゼラチン分解活性抑制効果 治療群、対照群の摘出腫瘍をfilm in situ zymographyに供した。対照群では、腫瘍存在部位および辺縁部に一致して強いゼラチン分解活性を認めた。一方治療群では著明に抑制された。すなわちMMP阻害剤による舌癌腫瘍組織のゼラチン分解活性抑制効果が証明された。 (今後の展望)同様のモデルを用いて治療実験を行い、MMP阻害剤による舌扁平上皮癌の頸部リンパ節転移抑制効果を検討する予定である。
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