研究概要 |
感音性難聴の治療として各種薬剤の蝸牛を治療のターゲットとした局所投与療法が試みられ、その有効性が報告されるようになってきた。今回の研究の目的は、ニモジピンの皮下投与およびステロイドの正円窓への投与の、実験的に作製した蝸牛障害に対する効果を検討することであった。 音響外傷による変化は、モルモットに6kHz、100dBSPLの純音を10分間曝露して行った。さらに90dBSPLの純音を10分間曝露、100dBSPLの純音を5分間曝露など条件を変えて行ったが、100dBSPLの純音を10分間曝露させた際の変化が安定しており、蝸牛障害モデルとしては適切と考えられた。 蝸牛に対するステロイドの投与に関する検討では、実際の臨床で比較的報告の多いメチルプレドニゾロンを用いた。モルモットの正円窓膜上にメチルプレドニゾロンを浸したSpongelを置き、その後の蝸牛機能の評価をABRを用いて行ったが、有意な変化は認めなかった。 ニモジピンの蝸牛障害に対する効果についての検討では、サリチル酸による蝸牛障害に対しては蝸牛血流量の減少は消失したが、聴力変化に対しては効果がなかった。ニモジピンのキニンによる蝸牛障害に対する効果の検討では、キニンによる聴力障害および異常なCAP adaptation patternについても効果を認めなかった[Proc. of the Seventh International Tinnitus Seminar 2002,The University of Western Australia, Nedlands, Australia, 2002:P12.;Audiol Japan 2001 ;44:365-366.]。ニモジピンの、100dBSPLの純音を10分間曝露による蝸牛障害に対する効果では、ニモジピンを投与した後に音響外傷を負荷した場合も音響外傷を作製した直後にニモジピンを投与した場合もわずかな変化しか認めなかった。 正円窓膜上からのステロイド投与による音響外傷の予防性については、100dBSPLの純音を10分間曝露前からステロイドを局所投与した際は音響外傷は軽減されたが、音響外傷を作製した直後からステロイドを局所投与した場合はわずかな変化しか認めなかった。
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