スギ花粉症マウスに対するスギ花粉の経口投与は免疫寛容を誘導するか否かを明らかにするためには、スギ花粉症モデルを作成する必要がある。パイロットスタディとしてスギ花粉症モデルを作成した。ゲージで飼育しているマウスに対して吸入チャンバーを利用してスギ花粉の暴露を行った。暴露は1日16時間で週2日とし、花粉の濃度は50万個/m^3に設定した。コントロールとしてスギ花粉粒子を暴露しないマウスも作成した。暴露期間を12週と24週に設定して暴露終了後断頭し、鼻腔および肺胞洗浄液を採取、それらの総IgE濃度を測定した。また心臓穿刺を行い、採血した後血清を分離、スギ花粉特異的IgE濃度を測定した。その結果、鼻腔洗浄液中の総IgEはスギ花粉暴露群で非暴露群より高値であった。肺胞洗浄液ではスギ花粉暴露群で総IgEは高値を示したが、非暴露群との間に優位な差を認めなかった。血清中のスギ花粉特異的IgE濃度は測定機器の感度の限界であり、正確な測定は不可能であった。以上から花粉暴露を行ったマウスにおいてスギ花粉症が発症していると考えられた。次に下鼻甲介粘膜の免疫染色を行った。T細胞系観察のためにCD3-eを、B細胞系観察のためにCD45R/B220を、メモリーT細胞のホーミングとナイーブリンパ球の観察のためにMadCAM-1を用いた免疫染色をパラフィン包埋切片を用いて施行した。Negative controlは花粉非曝露マウスの下鼻甲介粘膜、positive controlとしては肺胞洗浄液でIgEが上昇したスギ花粉症マウスの肺組織を用いた。その結果、スギ花粉症マウスの肺組織でCD3-e陽性細胞が肺上皮と血管内皮細胞に見られたが、その他の組織では全く染色されなかった。スギ花粉症マウスの感作後鼻粘膜の免疫染色は困難を極め、この時点て抗原経口投与は断念せざるを得なかった。今後は凍結粘膜を用いての染色を計画したい。
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