研究概要 |
平成13年度には、これまでに得た新鮮ウシ角膜上皮におけるKチャンネルの知見をもとに、ヒト角膜上皮培養細胞のホールセル電流を記録し、そのうちKチャンネル由来の成分を調べた。その結果、ヒト角膜上皮においても,ウシやウサギの角膜上皮と同様に、フェナメート、アラキドン酸や他の脂肪酸により増大し、ジルチアゼムで阻害される大コンダクタンスK電流が存在することが明らかとなった。その成果は、平成14年5月の第106回日本眼科学会総会において発表した。 また、平成13年度から14年度にかけて、この角膜上皮大コンダクタンスKチャンネル蛋白を同定する目的で、分子生物学的手法を用いた研究を行った。我々のウシ角膜上皮の研究結果から、大コンダクタンスKチャンネルは,近年解析が進んでいる2孔性Kチャンネル(2PDK)に属することが示唆される。果たして、培養ヒト角膜上皮細胞において、2PDKのサブファミリーのうち3種類が、RNAレベルで発現していることを確認した。さらに、その3種類の2PDKのcDNAの全長をクローニングし、蛍光を指標とするベクターを用いて、培養COS細胞に導入した。導入1〜2日後、蛍光を発する細胞を蛍光顕微鏡の下で選択し、パッチクランプ法にて発現電流を調べた。その結果、既知の2PDK由来のK電流が確認され、さらにその薬理特性は、大コンダクタンスKチャンネルのそれに一致した。従って、大コンダクタンスKチャンネルは2PDKに由来すると考えられる。その結果の一部は、平成14年1月の第68回日本中部眼科学会にて発表した。また、平成15年5月のThe Association for Research in Vision and Ophthalmology (ARVO)学会にて発表する予定である。
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