研究概要 |
糖尿病網膜症の発症には様々な成因の関与が示されているが、我々は高血糖状態で体内に蓄積される後期糖化反応生成物advanced glycation end products(以下AGE)が重要な成因の一つと考えている。生体内には様々なAGEの存在が明らかにされているが、最近我々はglyceraldehyde由来のAGEがin vitroにおいて強い血管新生活性を有することを見い出した。そこでわれわれは糖尿病網膜症患者と非糖尿病網膜症患者の硝子体中のglyceraldehyde由来のAGE濃度の比較検討を行った。また合わせて、現在最も糖尿病網膜症の進展に関与すると考えられているVascular Endothelial Growth Factor(VEGF)や単球/マクロファージの走化性を亢進させ血管閉塞を促進させるケモカインであるMonocyte Chemoattractant Protein-1(MCP-1)の測定も行った。 方法は増殖糖尿病網膜症18例、糖尿病黄斑浮腫6例、コントロールとして黄斑円孔9例の硝子体をELISA法を用いてそれぞれの濃度を測定した。 結果は、糖尿病網膜症群と非糖尿病群ではAGE(p<0.01),VEGF(p<0.01),MCP-1(p<0.01),ともに有意な差を認めた。さらに増殖網膜症と増殖性変化を伴わない糖尿病黄斑浮腫の間にも有意な差を認めた。 我々はin vitroにおいてglyceraldehyde由来のAGEが微小血管内皮細胞のVEGFやMCP-1の遺伝子発現を亢進させることを明らかにしている。 従って、糖尿病によって蓄積されるAGEは糖尿病の進展に伴い硝子体内でも増加がみられ、VEGFやMCP-1の局所の産生を促進させることによって網膜症の進展増悪をもたらすことが考えられた。
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