研究概要 |
骨芽細胞の性質を有するヒト骨肉腫細胞(Saos-2細胞とMG63細胞)およびヒト唾液腺癌細胞(HSG細胞)を塩化コバルト(II)六水和物で処理すると,これらの細胞は球形に変化してシャーレより浮遊し,ミトコンドリア活性が急激に減少して,細胞は死に至った。この細胞死はクロマチンの凝集と核の断片を伴い典型的なアポトーシスによる細胞死であった。さらに塩化コバルト(II)六水和物は濃度および時間に依存してこれらの細胞のDNAラダー形成を誘導し,その至適濃度と処理時間は0.5mMと24時間であった。これらの細胞に0.5mMの塩化コバルト存在下で,塩化亜鉛を加え培養すると,塩化亜鉛は塩化コバルトにより誘導されるアポトーシスを濃度と時間に依存して回復し,その至適濃度は50μMであった。さらに,Western BlottingとRC-PCR法により,塩化コバルトはBcl-2蛋白とbcl-2遺伝子の発現を抑制することが明らかになった。ところが,塩化亜鉛は塩化コバルトにより抑制されるBcl-2蛋白とbcl-2遺伝子の発現を濃度と時間に依存して回復し,その至適濃度は50μMであった。さらに,塩化コバルトによるアポトーシスとBcl-2蛋白の発現低下は,50μMのシステインにより回復した。以上の結果は塩化コバルトによるアポトーシスにはBcl-2蛋白が関与し,塩化亜鉛とシステインよるアポトーシス抑制はBcl-2蛋白の発現が関与することをしめす。さらに以上の結果は塩化コバルトによるアポトーシスとBcl-2蛋白の抑制には細胞内の活性酸素が関与し,塩化亜鉛やシステインによる活性酸素の除去により,アポトーシスが回避されることを示唆している。現在これらの成果の一部を論文にまとめ,投稿中である。
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