研究概要 |
昨年度までの研究でPorphyromonas gingivalis ATCC33277株において酸素暴露下で発現が増加する新規の蛋白質として分子量約9kDaの蛋白質(Pg9)を見い出し、その遺伝子をクローニングした。本年度はこの遺伝子の発現の調節機構と役割を調べた。Pg9蛋白質に対する抗体を作成する為に抗体に認識されやすいと予測される親水性の高い領域を2ケ所(15mer 10-23:17mer,62-77)選んで、ペプチドを合成し、それぞれをウサギに免疫し抗血清を作成した。得られた抗ペプチド血清はいずれもPg9蛋白質に特異的に反応した。この抗血清を用いて野生株の対数増殖期と定常期でのPg9蛋白質の発現をウェスタンブロット法にて調べたところ、定常期で発現の増加が認められた。そこで、この蛋白質の名称を、Stationary-phase Induced Protein A (SipA)とした。SipAの機能を解析する為にこの遺伝子の変異株を作成した。SipAをコードする遺伝子のORFの中央にエリスロマイシン耐性遺伝子断片を挿入しターゲットベクターとした。これをP.gingivalisに電気穿孔法にて導入し、エリスロマイシン耐性の変異株を得た。サザンハイブリダイゼーション法にて相同組み替えによりSipA遺伝子にエリスロマイシン耐性遺伝子が挿入された変異株であることを、また変異株が今回作成した抗SipA(Pg9)抗体に無反応なSipA蛋白質完全欠損株であること確認した。このSipA変異株と野生株を比較したところ、対数期には菌の増殖曲線に差は認められなかったが、対数期後期から定常期ではSipA変異株は増殖の抑制が認められた。この結果からSipA蛋白質はP.gingivalisの定常期における生存性に関与する可能性が示唆された。
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