研究概要 |
ヒト歯根膜線維芽細胞についてConnexin (Cx) 43の発現に転写因子AP-1 (Fos-Jun)が関与するかどうかを検索した結果,1.血清刺激してから,24時間の間Cx43のm-RNAの発現量に変化はみられないが,蛋白の発現は,刺激後12時間まで減少し,その後12時間で回復することが明らかとなった.また,c-fosのm-RNAは血清刺激30分後から発現していた.以上のことから,歯根膜線維芽細胞のCx43の発現にはAP-1が関与していないことが示唆された.血清刺激後,Cx43蛋白が減少する原因は,m-RNAの発現が抑制されたためではなく,蛋白の分解が亢進したためであると思われる. 2.無血清培地中で歯根膜線維芽細胞を培養することによりCx43の発現が時間に依存して増加することから,Cx43の発現は,AP-1以外の転写因子によって調整されていることが示唆された. 3.細胞は老化することによりc-fosを産生することができなくなることが知られている.老化細胞のCx発現量を正常細胞と比較するために,老化歯根膜線維芽細胞株を5株確立した.老化の指標として血清刺激後のc-fosのm-RNAの発現がないこと,すべての培養細胞が老化細胞のマーカーであるSA-β-galactosidase染色に陽性であることは確認済みである. 一方,我々はこれまでに歯根膜線維芽細胞がCx43以外にCx32,Cx40およびCx45を発現することを報告した(Tissue & Cell. 2002 Dec;34(6):375-380). Cxは現在までに16種類存在することが報告されており,組織または細胞によって発現する種類が異なることから細胞の機能との関連が注目されている.したがって歯根膜線維芽細胞が発現する複数のCxが歯根膜細胞のどの機能に関わっているか現在検索中である.
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