研究概要 |
今年度は、電離放射線および紫外線によるDNA障害の際に認められる、内在性のヒトCdc7並びにその調節因子であるDbf4の動態解析を行った。使用した細胞株は(1)ヒト白血病細胞株(U937,HL60)、(2)ヒト正常肺線維芽細胞株(IMR-90)、(3)ヒト毛細血管拡張性運動失調症皮膚細胞株(AT3BI, GMO2052A)である。結果は以下の通りである。 1.Cdc7の基質であるMCM2タンパクに対する抗体を用いてウェスタンブロッティング法によりその発現量を観察したところ、分化誘導時にはどの細胞株でも遅くとも24時間以内に発現量は減少した。 2.細胞周期の制御に関与するpRBタンパクとヒトCdc7の直接的な働きを調べるために、免疫沈降法を用いてウェスタンブロッティングを行ったが、両者に直接的な結合は見られなかった。 3.DNA障害や分化誘導時に見られるCdc7の発現量の変化が、Cdc7タンパクのUbiquitinationとどのような関係を有しているかについて、プロテアソームインヒビターであるLactacystinを用いてその機序を調べた。プロテアソームの機能が阻害されているにもかかわらず、Cdc7の発現量に変動が見られたことから、Cdc7の発現制御がタンパク合成以前に行われている可能性が示唆された。 4.RDS (Radioresistant DNA Synthesis)の状態を観察するため、上記1.(2)並びに(3)の細胞株に電離放射線照射を行い、ウェスタンブロッティング法により細胞内のCdc7の分布を観察した。Cdc7タンパクの発現は正常細胞では2時間の後に減少するが、AT3BI, GMO2052Aの両細胞株では発現に変動は無かった。
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