研究概要 |
歯周炎による骨吸収は、炎症反応により破骨細胞による骨吸収が惹起されたために歯槽骨の吸収が促進された為に生じ、重篤な場合には歯の喪失を招くことが知られている。本研究では炎症反応時に破骨細胞の機能を変化させる因子としてインターフェロン(IFN)とリポポリサッカライド(LPS)に注目し、これら因子の破骨細胞の分化・機能・生存について検索をおこなった。 1)LPSおよびIFNの破骨細胞分化・機能に対する解析 培養破骨細胞の分化過程においてLPSおよびIFNを作用させ、破骨細胞形成数ならびに吸収能をTRAP染色・ピット解析により検索した。LPSを作用させた場合、破骨細胞形成数に変化は認められなかったが、吸収能は増加傾向がみとめられた。一方、IFNを作用させた場合、破骨細胞形成数・吸収能ともに減少した。 2)破骨細胞におけるアポトーシス関連遺伝子の解析 アポトーシス関連遺伝子(iNOS,FasL,caspase 9)遺伝子発現の解析をLPSおよびIFN添加・無添加状態で比較した。LPS添加時ではこれらの遺伝子発現に有意差は認められなかったが、IFN処理時では、有意に発現が増加していた。 3)LPSおよびIFNによる破骨細胞におけるアポトーシスについての検索 LPSおよびIFN添加・無添加状態で、培養破骨細胞のアポトーシス現象を検索した。ヘキスト染色、TUNEL染色の結果、LPSを添加してもアポトーシスの促進は認められず、IFNを添加するとアポトーシスの促進が観察された。 以上の結果より、破骨細胞に対してLPSは骨吸収能増加作用を有するが、分化・生存には影響を与えないことが示された。また、IFNは破骨細胞の分化・機能・生存のいずれの段階においても抑制的に作用することが判明した。本研究の内容は現在、論文作成中である。 また、本研究の経費の一部を使用した内容を国際誌への発表ならびに現在印刷中である。
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