研究概要 |
水酸化カルシウム製剤は、覆髄剤,生活断髄剤、根管充填剤,根未完成歯の治療に応用され,又根組織を形成,誘発する薬剤として高い評価を受けている。一般には精製水で練和するペーストが有望視され,臨床では約30年前より広く利用され根管貼薬剤として定着している。しかし有効性の確認はあるが、その薬理作用には未解決な部分もあり,使用法次第では水酸化カルシウムの特徴であるその高アルカリ性により周囲組織にも大きな影響を与える事も推測される。そこで今回の研究では実験動物としてイヌを使用し根管貼薬剤としての水酸化カルシウムペーストが根尖孔外に溢出してさいにどのような反応が根尖部歯槽骨内で生じるか、周囲組織にどのような影響を及ぼすかについて検討した。まずイヌの歯に人為的な感染根管の状態を作り,そこに貼薬剤として,水酸化カルシウムのペーストを根管内に貼薬した。その際,ペーストは意図的にアピカルシートを穿通,根尖へ溢出させ、ユージノールにて封鎖した。この貼薬を3本ずつ行い直後,4週後,8週後に分類した。2ヶ月後被験歯を摘出し,固定後H-E染色を行いプレパラート作製しその推移を観察した。根尖部においては4〜8週後においても,ペーストと接した部位に線維化した肉芽組織が多く確認され,確実に炎症は退縮傾向を示していた。今回は意図的に根尖に貼薬剤を溢出させたわけであるが、その部位においても,肉芽組織と癒痕化がみられ大きな炎症の波及には到っていない事が確認された。ただし一部において壊死した組織も確認された.以上の事より,水酸化カルシウムは非常に有効的である事が判明した。しかしその一方で,幾度にもわたる多量の根尖孔外へのペースト供給はその強アルカリによる為害性を考慮した場合溢出は最小限に留める必要があるといえる。
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