研究概要 |
本研究は,誤嚥性肺炎の既往のある者に対して,肺炎発症の危険を増すような負荷を課す研究となっているため,その実施は慎重を期さなければならない。従って、本研究期間中には、倫理委員会に提出すべき予備研究結果がまとめることができたのみで、実際には実施できなかった。しかしながら、予備的研究は十分な結果を得ることができ、今後につながるものとなった。 予備的研究の対象者は、平成11年8月から平成12年12月までに嚥下造影検査を施行した療養型病院に入院している患者うち,誤嚥性肺炎が疑われるような発熱を認め,経口摂食を行っている65歳以上の意識障害を伴う高齢者31名とした。嚥下造影(VF)検査は垂直座位やリクライング位などの習慣位にて造影剤3ml嚥下させ,側方よりビデオに記録し、舌口蓋閉鎖不全,多量の誤嚥,嚥下後の咽頭残留(少量を除く),嚥下反射遅延時間の大幅な延長以上の所見が一つ以上あるものを経口摂取困難として経口摂取不可とした。 その結果、経口摂食困難と判断した症例は検査した約半数の16名で認められた。また,検査後6ヶ月以内に肺炎を含む心肺不全で死亡した患者は,経口摂食困難と判断した群のみの9名であった。一方、経口摂食困難症例16名のうち経管に変更できたのは11名でしたが,経口に変更できなかった症例との間に予後の差はなかった。この理由としては、老人性肺炎は口控内雑菌が原因菌であり,夜間に唾液などを誤嚥する不顕性誤嚥により発症し、とりわけ、意識障害が強い者で起こりやすいことが報告されていることから、経口摂取か否かは予後に大きな影響を与えなかったものと思われる。 夜間の不顕性誤嚥はRI検査を用いることにより、直接的に判断できる。今回の結果は、このRI検査を行うための根拠となりえるものであり、近い将来、RI検査を用いて、舌軟口蓋閉鎖の役割を明悪にしていく予定である。
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