研究概要 |
本研究では,インプラント治療における周囲軟組織の増生法を検討することを目的とした.2匹の実験用子ブタを用い,全身麻酔下にて,口蓋粘膜骨膜を剥離し,形成外科領域で皮膚の移植の術前伸展処置に用いられるティッシュエクスパンダーを設置し,切開歯肉の治癒の後,エクスパンダーに生理食塩水を1cc/weekずつ注入した.また,軟組織の増生材料として、形成外科で使用される硬化型アパタイトセメント(バイオペックス)及び、本学第一口腔外科試作アパタイトセメントを,同様に袋状に剥離形成した骨膜下に注入し,一定の治癒期間を採り,繰り返すことにより,経時的に軟組織を増生させた.比較には、印象採得から石膏模型を作製し,3次元スキャナーで歯肉形態の変化を比較した.また、伸展部の組織片を採取して,伸展前後での組織学的比較を行った. 口腔内および模型上での観察から、エクスパンダー設置部位では,硬化型アパタイトセメント注入部位より,形態的に高径で効果的な増生結果が得られた.しかし,エクスパンダー設置部位では,切開部の一部にコネクター部分の容積が原因と考えられる裂開が認められた.組織学的検索からは,エクスパンダー設置部位の歯肉組織と硬化型アパタイトセメント注入部位とともに上皮層が肥厚し錯角化の亢進する像が観察され,アパタイトセメント注入部位では上皮下固有層に毛細血管の増生およびリンパ球浸潤を伴う肉芽組織の形成が認められた. さらに、エクスパンダーにより伸展させた歯肉粘膜下にアパタイトセメントを封入して、一定の治癒期間をとった後の歯肉粘膜の組織学的検索において、直接アパタイトセメントを注入した場合の観察像と同様に、上皮層が肥厚し錯角化の亢進する像が観察され,リンパ球浸潤を伴う肉芽組織の形成が認められた. 今後、口腔内という環境下での組織増生に適用するためには、更に術式の検討が必要であると考えられる。
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