研究概要 |
骨結合したインプラントは特有な界面構造を有しており,その構造は20-50nm幅の未石灰化層(インプラント側)と,100ー500nmの走行不規則なcollagen線維から成る層(骨側)により構成されている.この微細な界面構造の形成には,collagenの線維形成と石化化の制御に関与するsmall leucine-rich proteoglycan(SLRP)とlysyl hydroxylase(LH)が寄与する可能性が十分に考えられる.本研究では,この界面構造形成におけるSLRPとLH機能の可能性を探るために,チタン(Ti)上で培養した骨芽細胞様細胞(MC3T3-1)の石灰化過程におけるこれら遺伝子の発現変化を調べた.Type I collagen(COL)とalkaline phosphataseの発現ピークはプラスチックウェル(Pl)よりもTiで遅れ,Ti上での骨芽細胞の分化の遅延が認められた.Pl上では培養30日後に,Ti上では培養40日後に石灰化が認められ,骨芽細胞による石灰化もTi上で遅れていた.しかし,前石灰化期から石灰化期への移行に伴うSLRPとLHのmRNA発現変化パターンは,TiとPl上で類似していた.石灰化に伴い,decorin(DCN)とLH2の発現は増加し,一方fibromodulin(FM)の発現は減少した.Lumican, biglycan, LH1とLH3の顕著な発現変化は認められなかった.以上より,Ti上での骨芽細胞による石灰化過程においてSLRPとLHの発現変化はそれぞれ異なっており,少なくともDCN, FMとLH2は石灰化に関与している可能性が示唆された.SLRPとLHの明瞭に異なった発現パターンは,骨-インプラント界面構造形成におけるこれら分子それぞれの特異的な役割を反映しているものと推測される.
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