研究概要 |
目的 顎顔面領域の悪性腫瘍に対する根治的手術の際、運動神経および知覚神経が同時に切除される場合が多く、患者のQOLの低下に直結する。近年、術後の機能低下を最小限にとどめるための術式が開発・応用されており、皮弁による再建舌に対して、遊離神経移植や血行を温存した移植神経の吻合を行う術式の報告も散見される。しかし、その評価は一定していない。本研究では血管柄付耳介神経モデルを作成し、血管柄付神経移植の優位性を検証する。 方法 生後6ヶ月以上、2.5〜3.5kgの白色家兎に対し、以下の2群を作成し、術後1,2,3,4,6,および11ヵ月目に評価した。(1)血管柄付神経移植モデル(VNG群):血管柄付神経片採取は、後耳介動脈、伴走静脈および後耳介神経を使用した。この血管柄付島状神経片を顕微鏡下で、神経切除モデルの神経に逆行性に吻合した。(2)遊離神経移植モデル(FNG群):遊離神経移植は、同じく後耳介神経から神経片を採取し、顕微鏡下で神経切除モデルの神経断端に縫合した。 結果および考察 移植片の長さはVNG群では変化なく、FNG群では短縮し、平均値は9.7cmであった。移植片の軸索再生速度は、両群に差はなかった。術後3ヵ月目で両群とも再生軸索は遠位縫合部を越え、旺盛だった。再生有髄軸索直径は、移植片内のB〜D点では再生初期には、A点に比して小さいが、徐々に増加した。移植後早期には、VNG群の再生が優れる傾向にあったが、これは瘢痕形成が少なく、またSchwann細胞の生存が、軸索再生に有利に働くためと考えた。後期に差がないのは、遊離移植でも移植神経片への新生血管の再開があり、また、用いた動物の神経再生能が旺盛であるためと考えた。今回、11cmという比較的長い神経片を用いたが有意な差はなかった。上記の他に、移植神経が比較的細く血行再開が速やかで、さらに血行の良好な移植床を用いたためと推察した。
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