研究概要 |
今回、ヒト口腔扁平上皮癌においてp27^<Kip1>蛋白の発現は最も重要な予後因子となりうることを報告した(Anticancer Res 22:2985-2990,2002)が、p27^<Kip1>蛋白の高発現例は統計学的有意に頸部リンパ節転移を認めず、また治療後に局所再発を認めず、これが経過良好につながっていたため、in vitroにてこれを解析することを目的に、前年度に作製したヒトp27^<Kip1>cDNAをpcDNA3.1にセンスならびにアンチセンス・オリエントに組み込んだ発現ベクターを利用し、ヒト口腔扁平上皮癌細胞に導入して、浸潤・転移能に及ぼす影響につき検索し、以下の結果を得た。1)p27^<Kip1>蛋白の過剰発現は、Boyden chamberを用いた細胞移動能測定法にて、細胞移動能を抑制し、逆にp27^<Kip1>蛋白の発現抑制は、細胞移動能を増強させること、2)p27^<Kip1>蛋白の過剰発現は、in vitroにおけるアウトグロースアッセイにて、アウトグロースを抑制し、逆にp27^<Kip1>蛋白の発現抑制は、アウトグロース増強させること、3)p27^<Kip1>蛋白の過剰発現は、癌転移関連遺伝子Tiam 1の発現を抑制し、逆にp27^<Kip1>蛋白の発現抑制は、Tiam 1の発現を増強させること、4)p27^<Kip1>蛋白の過剰発現は、細胞接着因子E-カドヘリンの発現を増強し、逆にp27^<Kip1>蛋白の発現抑制は、E-カドヘリンの発現を抑制させることを明らかにし、p27^<Kip1>蛋白発現は、ヒト口腔扁平上皮癌細胞において癌転移関連遺伝子Tiam 1や細胞接着因子E-カドヘリンを介して浸潤・転移抑制作用を発現している可能性が示唆され、これを報告した(Oncol Rep.,in press)。
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