研究概要 |
舌癌の根治的治療法は外科的に切除することである。しかし、舌機能を温存することを考えてその切除範囲を少なくすると癌局所再発の危険が増すことであった。癌の再発を抑制することは患者の予後を左右する重要な問題である。舌癌のサィズがT2以下の場合、舌癌の切除術を施行した後、その組織欠損を腹部や大腿部からの遊離分層植皮によって補うことが多い。申請者は舌癌の局所再発を制御するため、この移殖皮膚を応用できないかと考えた。即ち、移殖皮膚の細胞にインターロイキン4(IL-4), TGF-βおよびE-セレクチンの遺伝子を導入し、それを舌切除部に移殖することによって、舌癌の再発を予防する試みた。本研究の目的は、その臨床応用を目指すため遊離分層皮膚にIL-4, TGF-β、E-セレクチンの遺伝子を導入し、担癌ヌードマウスに移殖することによって癌の増殖を抑制できるか否かを調べることにある。また、同じくE-セレクチンを移植皮膚に導入することによって遠隔転移抑制効果を調べる。 インターロイキン4、TNF-α、TGF-βの遺伝子導入により、癌細胞の増殖とプロテアーゼ産生を抑制することによる癌の再発抑制効果を解析した。 (1)IL4及びTGF-βの発現ベクタープラスミドを作製した。 (2)実際の患者から得られた遊離分層皮膚にIL4及びTGF-β発現ベクターを導入した。導入する方法として、in vitroでリポフェクタミン法と電気穿孔法とを試みた。 (3)ヌードマウスの背中の皮下に口腔扁平上皮癌細胞株を注入し、腫瘍塊を作った。その腫瘍を切除断端に腫瘍が一部残存するように切除した。 (4)ヌードマウスの切除した背中の部位に遺伝子導入した遊離分層皮膚を移植した。 (5)期間を決めてヌードマウスを屠殺し、移植皮膚部の組織切片を作製し、残存癌細胞の状態を病理組織学的及び免疫組織学的に解析した。 また、導入したIL-4及びTGF-βの発現を免疫組織学的に調べた。
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