研究概要 |
Syndecanは,膜貫通型プロテオグリカンで,種々のECM構成分子や増殖因子などと結合し,細胞-細胞間,細胞-細胞外基質の接着や情報伝達に関与するとされている.胃癌,食道癌,大腸癌などでsyndecan-1発現の低下と腫瘍の分化度や悪性度,予後との関連が報告されている.そこで,今回,口腔扁平上皮癌を対象にsyndecan-1の発現を免疫組織化学的に検討した.対照は56例の治療前生検材料で,ホルマリン固定・パラフィン包埋切片を用い,一次抗体として抗ヒトsyndecan-1モノクローナル抗体(DAKO)を使用し,Envision kit (DAKO)にて免疫染色を行った.対照は正常口腔粘膜上皮を用いた.syndecan-1の発現は正常口腔粘膜上皮では角化層を除く基底細胞層から有棘細胞層の細胞膜表面に強く認められたが基底細胞層では一部で減弱が認められた.口腔扁平上皮癌での発現を,(+),(±),(-)の3段階に分類して評価を行った.結果は(+);26例,(±);19例,(-);11例で,syndecan-1の発現とT分類,Stage分類とに関連は認められなかった.分化度(WHO)では中等度分化型で有意に発現の減弱を認めた(低分化型なし).浸潤様式(山本・小浜)との関連は認められなかった.リンパ節転移との関連では転移群で発現が減弱する傾向を認めた.Kaplan-Meier法による5年生存率では(-)群で有意に予後不良であった.以上の結果よりsyndecan-1の発現は口腔扁平上皮癌の分化度を反映し,また予後因子として有用である可能性が示唆された.
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