研究概要 |
近年,口腔外科臨床において顎関節症の患者が増加しており,発症は女性に多く,発生率は二次性徴と更年期の二相性に多く認められることが特徴的である.これらの事実については,顎関節症と骨化に重要な骨髄毛細血管網との関連性についての研究は行われていない.そこで本研究は,下顎頭の成長過程における血管構築を知る目的で,幼若期から成熟期に至るラットを用いて光顕的ならびに電顕的な検索を行い,その成長過程での細胞増殖活性についての免疫組織化学的観察と,血管鋳型法を応用し走査型電顕により血管の走行と分布を観察することによって,軟骨内骨化過程と関連して構築される血管網の変化について検討した. 平成13年度は下顎頭の成長過程における血管構築の変化を知る目的で,Wistar系雌性ラットを使用し,3,7,12および24週齢の各4群について光顕的(H-E染色,alcian blue染色),免疫組織学的(BrdU)に検討した.その結果,下顎頭の軟骨内骨化は長管骨と異なり,二次骨化点は形成されることなく,骨髄血管の発達により行われていた.また,BrdU陽性所見は成長期の増殖細胞層および肥大軟骨細胞直下の骨化層には多数認められ,24週齢では少数であった.血管内皮細胞核にBrdUの取り込みが見られたことから,この時期に著しい血管増生が進行していることが確認された. 平成14年度の研究については走査型電顕的観察(血管鋳型法),透過型電顕的観察(二重染色法)を中心に行った.その結果,成長期では成熟期と異なり骨髄血管は密に発達し,軟骨内骨化に適応した血管構造であることが確認された.また,成長期の血管終末部と軟骨基質に介在し,単核の線維芽細胞様の細胞が認められた. 以上より下顎頭骨髄血管網の立体構築像や血管内皮細胞の形態,その周囲組織について観察を行い,ラット下顎頭の軟骨内骨化に伴う血管網の形態や性状が変化していることが確認された。
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