プロテオグリカンは、タンパク質にグルコサミノグリカンが共有結合した複合糖質で骨基質の構成成分の1つで、結合組織に広く分布しており、種々の細胞外基質や成長因子との反応を介して、多様な生物学的活性に影響を及ぼしている。また、骨芽細胞や骨細胞によって合成、分泌され骨基質に取り込まれ石灰化や基質形成に関与すると言われている。 本研究では、歯牙移動に伴う歯槽骨の改造過程にプロテオグリカンについて組織化学的、免疫組織学的に検討することで、歯の移動に伴う歯槽骨の改造過程を解明することである。 I.歯牙の実験的移動、観察方法:実験動物としてWister系雄性ラット(10週)を用い、左側上顎第一臼歯と第二臼歯間に0.152mmの加工硬化型Ni-Ti合金wireを入れ第一臼歯の近心移動を行った。実験期間は歯の移動から1、2、4、7、10日とした。観察は、左側第一大臼歯の頬側遠心根の遠心側歯槽骨を牽引側とし、近心側歯槽骨を圧迫側とした。資料はパラフィン包埋し、水平断6μmの切片を作製した。 II.免疫組織の至適条件の設定および抗体の特異性の証明:用いた抗体は、プロテオグリカンではラットデコリン、ヒト抗バーシカン、ポリ抗ラットバイグリカンを用いた。 結果.実験的歯牙移動1日では、圧迫側歯根膜でバーシカンの染色性が強かった。4日後になるとバーシカンの染色性は1日目よりも弱い染色性を示し、7日目では染色性はさらに弱くなり、牽引側との明確な違いを示さなかった。デコリン、バイグリカンに関しては、明確な結果がでておらず、現在実験系のさらなる確立を目指している。歯牙移動に伴う歯周組織改造にプロテオグリカンが関係していることがわかった。
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