研究概要 |
本研究は,矯正治療時に種々の生物学的ストレスを受けると考えられる骨芽細胞における菌体表層成分に対する応答性について検討した.その結果,下記のような知見が得られた.1.Toll様受容体(TLR)2陰性でTLR4陽性である骨芽細胞様細胞株SaOS-2において,大腸菌型合成リピドA(化合物506)刺激による破骨細胞分化因子RANKLならびに破骨細胞分化抑制因子OCIFの遺伝子発現変化についてRT-PCR法を用いて検討した.その結果,同細胞は化合物506刺激により明確なRANKL mRNA発現の増強を示した.他方,OCIF mRNA発現に変化がみられなかった.また,フローサイトメトリーによる細胞表層におけるRANKL発現においても同様の結果が得られた.2.SaOS-2細胞とヒト末梢血単核球細胞(PBMC)の共培養によるPBMCからのTRAP陽性細胞(破骨細胞様細胞)分化における化合物506の影響について検討した.その結果,PBMCはSaOS-2細胞との共培養によりTRAP陽性細胞の発現がみられ,同現象は化合物506前処理したSaOS-2細胞との共培養によりTRAP陽性多核細胞数が増強した.また,これら増強作用は,抗ヒトTLR4抗体であるHTA125により抑制された.以上の結果から,内毒素性リポ多糖(LPS)の活性中心であるリピドAは,骨芽細胞のTLR4を介してRANKL発現を増強し,破骨細胞活性化に関与していることが示唆される.
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