研究概要 |
平成13年度において,A. actinomycetemcomitansより産生される膜小胞には,A. actinomycetemcomitansの有する病原因子のひとつであるロイコトキシンが多く含有されていることが明らかになった。さらに,この膜小胞が宿主細胞へロイコトキシンを媒介する役割を担っている可能性を示した。そこで平成14年度では,膜小胞のヒト免疫細胞へおよぼす影響について検討を行った。本研究では,ヒト免疫細胞として樹立されたヒト骨髄性白血病細胞株であるHL60細胞を用いた。HL60細胞と膜小胞を反応させた後,抗膜小胞抗体を用いて免疫蛍光染色を行い,共焦点レーザー顕微鏡下で観察した。この結果,膜小胞がHL60細胞の細胞膜上に結合する所見が得られた。しかしロイコトキシンはHL60細胞に対して,早期に膜構造を溶解するため,ロイコトキシンを多く含有する膜小胞は,細胞膜に結合した後,すみやかに細胞を溶解してしまう可能性が考えられた。しかしながら,膜小胞添加と同時に抗膜小胞抗体を反応させた場合,あるいはロイコトキシンに対する阻害剤を添加したところ,細胞膜上に結合した膜小胞が観察された。加えて,ロイコトキシン遺伝子を欠落させた細菌株から産生された膜小胞は,HL60細胞と速やかに反応するが,細胞毒性を示さなかった。これらの結果から,膜小胞はロイコトキシンをHL60細胞(宿主免疫細胞)へ媒介するが,ロイコトキシンの存在とは関係なく細胞膜に結合することが明らかになった。
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