研究概要 |
歯周病原性細菌に良好な感受性を示す報告のあるマクロライド系抗菌薬についてヒト歯根膜由来線維芽細胞(Pel細胞)を用いて歯周組織への為害作用を推測した。7種類のマクロライド系抗菌薬、エリスロマイシン(EM)、クラリスロマイシン(CAM)、ロキシスロマイシン(RXM)、ジョサマイシン(JM)、ミデカマイシン(MDM)、ロキタマイシン(RKM)、アジスロマイシン(AZM)をPel細胞に作用させ、細胞為害性を比較した。 (1)Pel細胞にマクロライド系抗菌薬を48時間作用させたときのコロニー形成率をもとに濃度反応曲線を描いた。これより細胞生存率を50%低下させる濃度(LD_<50>)を求めた。Em, MDMのLD_<50>は>300μMであった。RKM、RXM、CAM、AZM、JMのLD_<50>は24.4±9.9μM〜170.0±17.0μMであった。LD_<50>で細胞毒性の強さを比較したところ、RKM>RXM>CAM>AZM>JM>EM≒MDMであった。RKM、RXM、CAM、AZM、JMの毒性は、EmやMDMの少なくとも1.7〜12.2倍強かった。 (2)歯周病原性細菌(Porphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia, Actinobacillus actinomycetemcomitans)に対する最小発育阻止濃度(MIC_<90>)でのPel細胞の生存率は、RKMで≧53.8%、RXMで≧92.7%、CAMで≧94.6%、AZMで≧97.1%、EMで≧86.2%であった。 (3)Pel細胞のアルカリホスファターゼやタイプ|コラーゲン遺伝子のmRNA発現に影響を与えないRXM、CAM、AZMとEMの濃度を調べた。その結果、RXNは≦3μM、CAMは≦10μM、AZMとEMは≦3μMであった。歯周病原性細菌に対するMIC_<90>はRXMで≦4.8μM、CAMで5.3μM、AZMで2.7μM、EMで21.8μMである。 (4)(1)、(2)、(3)の結果から、7種類のマクロライド系抗菌薬のうち、CAMとAZMであれば、これらを歯周病原性細菌に対するMIC_<90>の濃度で歯周ポケット内に局所適用しても、歯根膜の成長や分化にほとんど為害作用を及ぼさないことが推測された。
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