研究概要 |
一年目の研究により、ジルコニウムテトラ-t-ブトキシドと1,1,4,4-テトラフェニルブタン-1,4-ジオールから生成する錯体にトリフェニルホスフィンオキシドを添加した触媒を用いると、ビストリメチルシリルパーオキシドの存在下、様々なオレフィンから一般性高くワンポットでのβ-シアノヒドリンが可能となることを見いだした。本反応は中員環のオレフィンからも目的物を高収率で与え、また立体選択性、立体特異性も高いことが分かった。反応機構的には、オレフィンのエポキシ化ステップと開環ステップの2段階からなる反応であり、最初のエポキシ化にはジルコニウム、BTSP, TMSCNが、また次のエポキシドの開環にはジルコニウムとTMSCNが必須であった。それぞれのステップに関する触媒の速度論的次数は、第一ステップが一次、第二ステップが二次であることがわかった。これらの結果はジルコニウム触媒がワンポットで多段階を促進するために、その触媒機能を各ステップに応じて変化させていることを示している。本年度、この合成的に有用なワンポット多段階促進反応を触媒的不斉化することをめざし研究を継続した。TADDOL誘導体を中心にその構造最適化をシクロヘキセンを基質とする反応でおこなったところ、水をジルコニウム触媒に対し1等量添加し、トリフェニルホスフィンオキシドを添加しなかった場合に、アセタール部位がジエチルアセタール、アリール部位がオルトエチルフェニルのTADDOLを用いることによった最高68%eeまで選択性を向上させることができた。
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