研究概要 |
平成14年度は、13年度にひき続き、研究実施計画に基づいて超原子価ヨウ素試薬置用いる新規環境調和型反応の開発研究を展開した。申請者は、咋年度、報告したリサイクル型反応剤であるポリマー担持型超原子価ヨウ素試薬poly(diacetoxyiodo)styrene(PDAIB)を用いる水中でのジオール類からラクトン類への酸化反応系を異種アルコール間の反応に応用し、メタノール共存下、種々の1級アルコール類からメチルエステル類への収率の良い直接変換反応を見出した(Synlett,2003,582.)。また、本反応をスルフィド類の酸化反応にも適用し、水中、KBr存在下、PDAISを用いることにより種々のスルフィド類から対応するスルホキシド類への高選択的かつ高収率な変換法を開発することができた(ARKIVOC,2003,in press.)。一方、水中の反応だけでなく多くの生物活性天然物の基本骨格であるビアリール構造の効果的な構築についても併せて検討した。その結果、フェノールエーテル類に比べ酸化電位が高く(酸化されにくく)、副反応も起こり易いため従来の酸化的手法を用いては低収率でしかビアリール体が得られなかったアルキルアレーン類の2量化反応において、BF_3・Et_2O活性型phenyliodine(III)bis(trifluoroacetate)(PIFA)を低温下で用いることにより、収率の良いビアリールカップリング反応を初めて開発することができた(Tetrahedron Lett.2002,43,9241.)。この他、リサイクルも可能な固体酸触媒、ヘテロポリ酸をPIFAの添加剤として用いることによりフェノールエーテル類の分子内反応によるスピロジエノン類への高効率的な変換反応の開発にも成功している(Chem. Eur. J. 2002,8,5377.)。今後、ポリマー担持型ヨウ素試薬の利用や添加剤、溶媒等の工夫により環境調和型反応への展開を図りたい。
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