研究概要 |
研究代表者の所属する研究室では,フルオラス化学の研究を行っている。ペルフルオロアルカンなどのフルオラス溶媒は,水とはもちろん炭化水素などの有機溶媒とさえ混じり合わず,また毒性もほとんどない環境にやさしいグリーンな媒体として最近注目されている。有機溶媒と混じり合わない性質に着目すれば,フルオラス溶媒に固定できる触媒を用いた反応を開発できれば,容易に触媒を回収・再利用できるのではないかと期待される。そこで,フルオラス溶剤に容易に溶解するランタニド錯体を用いた新規連続反応の開発に取りかかった。まず触媒として,3価のランタニドのルイス酸性を考慮して,配位子に多フッ素原子置換スルホンイミドを用いたルイス酸触媒(Yb[N(SO_2R_f)_2]_3)を用いることにした。フルオラス溶液に触媒を固定するためには,配位子への多フッ素原子の導入が不可欠であったが,電子吸引性配位子が好ましいルイス酸触媒をデザインするにあたって,この点は好都合であった。プローブ反応としてシクロヘキサノールの触媒的アセチル化反応をトルエン-ペルフルオロ(メチルシクロヘキサン)二相系で行ったところ,定量的に生成物を与え,フルオラス相は触媒溶液としてそのまま再利用が可能であった。次にフルオラス相を固定相,有機相を移動相とした連続反応を行った。リアクターには二相系溶媒を激しく撹拌する箇所と相分離させる箇所を二つの管でつないだ特殊なガラス器具を製作・使用した。激しく撹拌しているフルオラス触媒溶液に基質を溶解した有機溶液を一定速度で送液したところ,相分離後に有機相のみをオーバーフローさせて,目的の生成物の溶液をほぼ定量的に得ることができ,TONはほぼ10,000を達成した。
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