研究概要 |
ヒトマクロファージは"パトサイトーシス"と名付けられた食作用で凝集したLDLを効率よく取り込み泡沫化する。パトサイトーシスではマクロファージは凝集LDLを入り口が閉じることのないsurface-connected compartments (SSCs)に取り込み蓄積するが、plasminによりSCCs内で凝集LDLが壊れSCCsから放出されることが明らかになった。マクロファージが取り込む前の凝集LDLと放出されたものでは、構造や組成が異なっていた。また、マクロファージをホルボルエステルであるPMAで活性化すると、SCCsに取り込んだ凝集LDLを放出しにくくなり、細胞内にコレステロールエステルを蓄積しやすくなった。マクロファージはコレステロールエステルを加水分解する二つの酵素、酸性および中性コレステロールエステラーゼを有する。そこで、パトサイトーシスの役割を明らかにするために、PMAとplasminが凝集LDLの代謝にどうのような影響を及ぼすのかを検討した。 マクロファージは凝集LDLを取り込み、plasminogen存在下で、凝集LDLをSCCsから放出した。マクロファージをPMAで活性化すると、plasminogenによるTCA-不溶性画分(リソゾームに入っていない未消化体)は63%に減少した。PMA刺激により細胞内での凝集LDLの分解は2倍に,凝集LDL中のコレステロールエステルの加水分解と細胞内コレステロールの再エステル化を3倍に増加した。PKCの阻害剤であるGo6976で凝集LDLの分解が阻害されたことから,分解はPKCにより媒介されると考えられた。培養液中に検出される酸性コレステロールエステラーゼ活性がPMA添加で2倍、凝集LDL添加では4倍ほどの値を示したことから、酸性コレステロールエステラーゼはSCCs内の凝集LDLに作用し、その結果凝集LDLの構造や組成が変化したと考えられる。細胞内の中性コレステロールエステラーゼ活性はPMA添加で50%に低下したことから、PMA刺激によりマクロファージは細胞内により多くのコレステロールエステルを蓄積しやすくなったと考えられる。以上のことから、PMAはplasminのよる凝集LDLの放出を阻害し、泡沫化を促進すると考えられた。
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