研究概要 |
還元型活性酸素種(スーパーオキシド,ヒドロキシラジカル)や一重項酸素を活性種とし,高い量子収率を有する光増感剤であるフラーレン(C_<60>,C_<70>)は,がんの光線力学療法剤や光抗菌剤などの医薬品の新規骨格あるいは原料としての期待を集めている.これまでの研究においては,フラーレンを非イオン性の鎖状界面活性剤であるポリビニルピロリドンにより可溶化した包接体を用いて,光照射下における生物活性に関する報告を行ってきた.本研究においては,合成超分子の包接化合物の調製を行い,フラーレンの可溶化および,生体内での移動促進を目指すため,包接化合物の一つ,キャビタンドを合成した.アルキルアルデヒドとレゾルシノールの酸触媒縮合反応により,高い収率で選択的に四量体であるレゾルシナレンを合成し,これとジクロロキノキサリンの架橋反応によりキノキサリン結合型キャビタンドを合成した.これをVT-NMR(varied temperature NMR)により解析し,温度依存的に可逆的なコンフォーメーション変化を起こす事を明らかにした.また,高分解能NMRを用いたバインディング解析により,本化合物がフラーレンとの親和性を示すことも明らかになった.また他方,上記のポリビニルピロリドンによるフラーレン包接体を用いて,グラム陽性菌に対する光抗菌作用も明らかにした.これらの結果は,フラーレンの医薬品への応用の可能性を強く示唆する.
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