研究概要 |
GHQ/SCAP(中央)が指示した看護改革を,地方軍政機構の末端に位置した府県軍政部(地方レベル)の活動内容から捉えることにより,改革内容の真意を読み取ることができると考える。筆者はこれまで,山梨県を一つの事例として取り上げ,地方における看護政策の実施過程を明らかにしてきた。本年度は,山梨県と比較検討する県を決定するために,一次史料の収集を国立国会図書館憲政資料室で行なった。GHQ/SCAP Recordsより,公衆衛生福祉局(PHW)と民間史料局(CAS)のSheetsから,"Military Government Team"をKeywordsとして探索し、Annex B-1(公衆衛生)にある"Public Health Activities"を主に抽出し,分析をした。また,データーベースも活用した。(http://www.ghq.ritsumei.ac.jp/db/) 収集したSheetsから,幾つかの県を選択して比較検討をはじめた。先ずは,これまでの山梨県と初期条件(県の規模,人口など)が類似する徳島県を選択し,看護政策の実施過程を考察した。また,山梨県と同じ司令軍政部であった埼玉県,静岡県,新潟県と,戦後日本の看護界をリードした高知県,岡山県,中央からの距離的影響を検討するための北海道の分析を続行中である。 地方レベルでの看護改革を考察すると,各県には強力な軍政官の存在と,その具現化のために活動する地域の実行者が必要であると思われ,それらが実施過程に差異をもたらすと考えられる。地方からの視座で捉えると,地域住民の日常生活や看護職の公衆衛生活動,軍政官の個人的特性や指導内容の詳細が見えてくる。各県の規模や背景,中央からの距離,県の疾病構造や産業構造の違い等,多くの要因を整理し,なおかつ各県の地域格差を前提として,さらに地方レベルでの看護改革を明らかにしていく必要がある。
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