本研究では、悪性疾患の治療に臨むクライアントの自己決定に関する看護師の認識を明らかにすることを目的として、看護師を対象に半構成的面接調査を行った。面接期間は平成13年11月13日から平成14年1月4日であり、調査同意書により同意が得られた13名に対して60〜90分間の面接を行い、面接内容をテープに録音した。被面接者の勤務病棟は外科、内科、婦人科、血液内科であり、当該病棟での勤務年数は2〜7年であった。面接では主に「病名の告知はいつ、誰に、どのようになされるか」「治療や病状に関する情報の提供は、誰に、どの程度なされるか」「クライアントは提供された情報を理解し、積極的に治療に関わっているか」「クライアントにとって自己決定は重要なことか、それは何故か」などについてインタビューを行った。病名の告知に関して特徴的なのは、家族には真実が告げられるが、クライアント本人に対しては必ずしもすべての情報は提供されないと言うことである。病名の告知はいくつかのパターンに分けられる。家族に真実を告げた上で家族の希望により本人には真実を告げない、本人と家族が同席したところで真実を告げる、家族に真実を告げた上で家族の了承のもとに本人にも真実を告げる、である。家族には必ず真実が告げられる理由として、本人を最もよく理解しているのは家族であり、本人を支えていくためには家族の理解と協力が不可欠であるからと考えている。病名の告知がされていても、病状が悪化してきたり終末期に至った時期には、悪い情報までも提供されることは稀である。自己決定の重要性に関しては半数以上の看護師が、苦しい治療を乗り越えてより充実した生活を送るために重要であると答えている。中には、治療や病状に関する情報提供を受けて自己決定することは当然であると答えた看護師もいる。
|