研究概要 |
本研究は,患者および家族に何らかの行為の学習が必要とされる援助場面において,看護者が,その行為を説明し対象者の理解を促進するために,発話と行為とを効果的に提供するための条件を明らかにすることを目的としている. 大学4年生の看護学生,すなわち,4年間の看護基礎教育を修了したジュニアエキスパートを対象として実施した看護行為の遂行実験において,被験者らは自らの看護行為の完成度を,客観的評価よりも厳しく(主観的に)評価する傾向が確認された. 一方,看護行為の学習経験を持たない大学1年生,すなわち看護行為のノービスにおいては,自身が遂行した看護行為をほぼ完全であると判断する傾向が強く,客観的評価に比べ,主観的評価の成績が有意に高い値を示した.さらに,ノービスにおける実験からは,看護行為を観察学習する段階において,被験者が課題となる看護行為を「完全に理解した(100%遂行できる)」と思っても,いざ遂行してみると,「できる」と考えていた行為内容のうち,正しく実施される割合は,60%にも満たないことが確認された. これらの結果から,看護に関する未学習者に対し,既学習者である看護学生(看護基礎教育修了時点のジュニアエキスパート)は,看護学および関連科目の学習経験によって,看護行為に関する何らかの評価基準を有しており,その基準はノービスよりも詳細であるため,自身の遂行する行為について,内的フィードバックが活性化されており,より厳しく評価していることが考察された. 今後は,内的フィードバックに用いられている情報を,看護場面における言語化の実際という観点から,更に検討する必要性がある.
|