今期では、身体機能維持・増進が期待される「運動」の効果を通し、心身共によりよい状態へ変化・成長することである「ウェルネス」を高める介入方法と効果の明確化を目的として文献検討したので、以下に報告する。 日本の高齢化は世界に類をみない速さですすみ、高齢者における「元気よく生活できる人」の割合を維持・増進していくことが課題となる。そのため、まず運動の効果について文献検討したところ、適切な運動は体力の維持・増進、そして生活習慣病予防等の効果やメンタル・ヘルス改善にも効果があるとされていた。 次に「ウェルネス」に関する文献検討で以下のことがまとめられた。アメリカを中心に、より高いレベルの生活機能に向けた絶えまない変化・成長プロセスである「ウェルネス」が15年来高まってきている。それは高齢者にとって、疾患があっても今の状態を維持・増進し、疾患のない人はよりよい状態になることと考えられる。我が国では「ウェルネス」をキーワードとした研究は少ない。類似する概念の「健康増進」、「健康づくり」をキーワードにしたものでも1987〜2002年で数件であり、対象者は高齢者、肥満女性、地域住民が多く、介入方法は知識提供が多くなっていた。欧米では、その「ウェルネス」をキーワードにした研究は多くみられ、病態や年齢の幅広い対象者に、知識提供、行動療法的介入を組み合わせたプログラムが行われている。介入方法では主に知識提供と行動療法的介入があるが、前者では望ましい行動の維持期間が短いことが多かった。 今後は「ウェルネス」の意義や介入方法とその効果の把握を更に行いながら、運動による効果や栄養・休養の知識提供と行動療法的介入を組み合わせた、我が国の高齢者に適するようなプロトコールを検討していく予定である。
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