緩和ケアに対する経済分析はマクロ的なものや、一般病棟などのがん患者を対象としたものが多く、緩和ケア病棟の入院患者を詳細に検討したものは殆どない。そこで、関東のある病院の協力を得て、病院内にある緩和ケア病棟の収支、レセプトに関する分析を行った。病棟全体の収支に関しては、平成13年4月から平成15年1月までのデータを対象とした。また、個々のレセプトに対する分析は平成14年4月から平成15年1月のデータを対象とした。 該当期間の平均患者数は14.0人であった。緩和ケア病棟の収支に関する分析では、まず緩和ケア病棟入院料と室料・緩和ケア病棟入院料を用いなかった場合(ここでは出来高と呼ぶ)に関する分析を行った。期間中の月平均収入は緩和ケア入院料で1729.4万円、室料164.9万円、出来高で995.7万であった。緩和ケア入院料と出来高の比は入院患者数と若干の相関があった。次に、人件費、薬剤・検査等(投薬、注射、処置、手術、検査など)、原価償却費(概算)などに関する分析を行った。さらに、患者個人に関するデータを診療録等から取得し、属性、症状などの背景情報と出来高の関連を検討し、入院からの日数別の比較、(死亡)退院前の日数での比較などを行った。症状が多い・特に痛みが強い患者に関しては薬剤費が高く、他の疾患でみられるほどの死亡前の医療費の上昇傾向はみられなかった。このような対象に対して、レセプトデータの詳細な検討は他にはなく、意義深いデータが得られたと考えられる。
|