研究概要 |
【研究目的】昨年の面接調査をさらに進め,変形性股関節症(以下OA)で人工股関節全置換術(以下THA)を受ける患者が,手術療法前後の生活体験をどのように認識しているかを明らかにし,その変化プロセスを構造化する【研究方法】対象者が語った内容の逐語的な記述をデータとして,質的帰納的方法を用いて分析した。面接は一人につき1〜5回で,片側,両側THA患者毎に類別した。【結果】片側THAの患者18人,両側THAの患者は4人で,女性が多かった。OAで両側THAを受けた患者の手術療法前後の体験を時系列に比較した結果,《制約される生活》から《折りあいをつけた生活》への変化の過程と変化に即した取り組みが見いだされた。手術を受ける前は「何をするにも痛い」と日常的に痛みが存在し,跛行により自尊感情が低下する《痛みにより制約される生活》から術後に痛みからの開放と歩行や歩容が改善し,《制約からの解放》を体験した。しかし,時が経つにつれ,股関節屈曲制限の不自由さは「何でもはできない」と機能回復の限界を感じさせ,人工関節による《障害と折りあいをつけた生活》へと変化した。また,両側THA患者では,術前の制約がより大きいため,術後は脱臼や転倒に不安はあるが,痛みのない生活に満足感を示した。脱臼や耐用年数等人工関節への不安はすべての患者が持っているが,再置換まで「元気に楽しく暮らせる」と肯定的に受けとめ,障害者になった自分を受けいれたり,人工関節を長く使う取り組みに意味を与えていた。以上の結果をTHAを受ける患者の生活体験として構造化した。【考察】THAを受ける患者の生活体験の過程を考慮して継続看護を行うことが重要であると示唆された。【看護実践への取り組みと今後の課題】結果を基に,整形外科の医師や看護師と退院指導の検討を行っている。今後さらに教育内容や方法について吟味した上で,評価することが必要である。
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