<研究目的>夫婦間暴力における妻の離別に関する意思決定プロセスを明らかにし、看護支援に関して考察すること。 <研究方法>夫婦間暴力の駆け込みシェルター代表者を介してシェルター利用者に面接協力を求め、承諾が得られた7名に1対1の半構成面接を行った。逐語録をデータとし、継続的比較分析を行った。 <結果および考察>分析の結果、5つのカテゴリーが導き出された。 カテゴリー1「暴力を生み、反復させる夫婦間の責任の不均衡」:夫は何かにつけて妻に責任を負わせようとし、日常生活の些細なことやライフイベントをきっかけに暴力が起こっており、男性優位の社会通念や夫のアルコール問題が背景に語られていた。 カテゴリー2「不均衡な生活を暴力で維持しようとする夫」:夫は暴力をエスカレートさせながらも、妻を引き止めるために一時的に暴力を停止し、不均衡な生活を維持しようとしていた。 カテゴリー3「不均衡な夫との生活に生き抜く支えを模索する妻」:妻たちは、過酷な生活を様々に意味づけ、生き抜く支えを見つけ、暴力をコントロールしようとしていた。夫と子どもとの生活への愛着や暴力から受ける痛み、暴力はなくなるという希望がせめぎ合い、離別への決意が揺れ動いていた。 カテゴリー4「離別の決意を促進する原動力」:暴力はコントロールされることはなく、妻たちの生命や支えとしていた子どもをも破壊し始めるとき離別への決意を促進されていた。そして、「あなたは悪くない」という周囲の言葉が離別への決意を支えていた。 カテゴリー5「容易ではない離別の実行」:夫の監視や、援助資源の不足、心身の痛み、先行きの見えなさから離別の実行は容易ではなく、離別を猶予せざるを得ない過程が語られた。シェルターの存在が離別に見通しを与え、実現に導いていた。 看護支援には、妻たちのせめぎ合いを理解し、夫婦間暴力に関する正しい知識と情報を提供することが重要であると考えられた。
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