児が川崎病に罹患してからの家族の診断前、診断時、退院時、現在の4段階における思いと家族内で調整困難だったこと、必要なサポートについて明らかにすることを目的にJ大学付属病院小児科外来にて母親に対する面接調査を行った。倫理的配慮としてデータは個人を特定できないようし、また中断する権利があること等を話し、了承の得られたものを対象とした。また父親に関しては面接時に了承を得て、アンケート用紙を郵送し、返送してもらった。26名の母親と面接行い、父親対象のアンケートの回収率は76.1%であった。子どもの年齢は1y6m〜8y5mで平均4.2y(±1.61)、発症年齢は2m〜5y8mで平均2.48y(±1.61)であった。発症後の経過年数は1ヶ月〜5年で平均1.84年であった。冠動脈の軽度拡張あり3名、γグロブリンの使用20名であった。母親の平均年齢は35.1歳であった。先行研究では診断後の不安の報告が多かったが、診断前の方が不安や心配を強く抱きやすい人がいることが分かった。川崎病は診断に時間を要し、発熱以外にも多彩な症状が現れ体力の消耗が激しく、側にいる家族は心配や不安を抱きやすいと思われる。川崎病既往児の母親が持つ「突然死への不安」が問題視されてきたが今回の調査では退院時以降に「死への恐怖」を表現している者はおらず、「再発の不安」や「血液製剤の副作用の不安」が表現されており、以前とは不安の内容は変化していた。さらに病気の原因は未だ究明されていないことから「原因についての不安」や「偏見についての不安」を抱く者もあり、母親の多様な思いが伺えた。家族内で調整困難だったこととして「親戚の病気理解」があげられており、母親の中にも「公害病」と誤解する者があった。また罹患以前に川崎病をよく知っていた者は少数であり、依然として川崎病はよく知られていない状況にあった。病院側がパンフレット等を用意し活用することにより、理解を促す必要性が示唆された。
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