研究概要 |
2002年8月12日〜9月4日のドイツ訪問時の調査概要及びその後の調査状況を以下に報告する. BerlinにあるMax Planck協会付属歴史公文書館(8/14〜8/30訪問)では,旧東ドイツ所有のPlanck蔵書を調査した.今回は,約250冊ある蔵書のうち,熱化学に関係する彼の自著やJames C.Maxwell, Pierre Duhemらの著作等,53冊を対象にした.調査内容は,著作の外観および背表紙裏にある署名の撮影,著作中の書き込みの所在確認および複写であった.調査の中で,James C.Maxwell著『Lehrbuch der Electricitat und des Magnetismus』(1883), Franz Neumann著『Vorlesungen uber theoretische Optik』(1885), Gustav Kirchhoff著『Gesammelte Abhandlungen』(1882)といった書物をPlanckが丹念に読んでいることが分かった.1880年代に出版された電磁気および光学関連の著作が読まれているのは,1890年代中頃以降の熱輻射研究に関わるものと思われる.また,Emst Mach著『Beitrage zur Analyse der Empfindungen』(1886)への書き込みについては分析途中であるが,いつ書き込みしたか特定できないにせよ早い時期の版であるため,19世紀末におけるMachの主張に対するPlanckの姿勢を確認できると思われる. Berlin国立図書館の手稿部門(8/13〜9/2訪問)では,Wien-Planck書簡を調査した.手稿部門の「Wien遺品」に依拠したWien-Planck書簡は,A.Hemann, J.L.HeilbronらのPlanck研究において,各時代のPlanckを描写するのに使用されたが,手稿部門には「遺品」に加えて「Wien遺品補遺」が収められていた.これは1980年にWienの娘Waltrautから引き取られたものである.「遺品補遺」は科学史研究でほとんど活用されてこなかったため,「補遺」に含まれる書簡の調査を行った.内訳は,1900-1928年における,PlanckのWien宛て手紙,葉書が15通,16通であり,WienのPlanck宛て手紙,葉書が23通,1通である.各書簡には彼らの科学的信念や他の科学者の動向に触れたものがあり,「補遺」は当時の科学界の状況を確認できる資料といえる.
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