研究概要 |
本研究の目的は,筋損傷と筋小胞体の機能との関係を明らかにすることである.塩酸ブピバカインを用いて薬理的に筋損傷を引き起こした際の筋小胞体の機能変化をCa2+-ATPase活性および筋小胞体膜の性質の変化の2点から検討した. 筋損傷を薬理的に引さ起こすと筋小胞体のCa2+調節(Ca2+handling)能力の低下と筋小胞体の膜の損傷の両方が生じる可能性が示唆された. さらに,塩酸ブピバカインの注入量を変化させると,投与量に応じてヘマトキシリンエオジン染色で観察される筋損傷の程度が変化し,筋小胞体のCa2+-ATPase活性の低下も生じた.しかしながら,Ca2+-ATPase活性の低下と投与量あるいは損傷の程度との関係についてはっきりとした傾向は認められなかった.これには例数が少なかったことも原因として考えられより,詳細な検討が必要かもしれない. また,Ca2+-ATPase活性の低下のメカニズムを探るため,本研究では活性酸素の影響について検討した.損傷させた筋のホモジネートに還元剤であるジチオトレイトールを添加して,Ca2+-ATPase活性の低下が抑制されるかどうかを検討した結果,統計的に有意ではなかったが,活性低下が抑制される傾向が観察された.これも同様に引き続ぎ検討を加えていく予定である.
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