研究概要 |
高強度のエキセントリック運動は筋組織の損傷を引き起こす.損傷した組織の筋細胞は浮腫や壊死などを起こしていることが観察される.その一方で,微小循環網を形成している毛細血管の形態的な損傷はほとんど起こらないことが光学顕微鏡による形態観察によって明らかにされた(平成13年度研究実績).しかしながら,毛細血管を形成する血管内皮細胞の微細構造や微小循環血流量などの機能的な能力がエキセントリック運動によって受ける影響については不明である.そこで今年度はラットの運動誘発性の筋損傷モデルにおいて,骨格筋毛細血管の超微細構造を電子顕微鏡によって観察し,さらに運動負荷後(運動1,3,7日後)に見られる安静時の筋血流量の変化について検討した.血流量はマイクロソフェア(Microsphere : MS)法によつて調べた.その結果,光学顕微鏡観察と同様に損傷筋の毛細血管内皮細胞はエキセントリック運動によって構造的なダメージを受けていないことが観察された.また,筋血流量機能については,運動後7日までの安静時筋血流量が対照脚と比較して運動脚では有意に高い結果が示された.そして運動脚の血流量は運動後1,3,7日の順で経時的に低下することが示された.損傷した筋組織では運動3日後までに白血球の浸潤などが活発に見られることから,筋組織内における微小循環血流の高い状態が続いていることが考えられる.以上のように,本研究では損傷筋において毛細血管は正常な形態と機能が保たれていることが明らかにされた,これは運動負荷後に観察される筋血流量の確保に貢献しているものと推察できる.
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