研究概要 |
本研究の目的は運動時の酸素供給のシステムを末梢血管の脈管動態および骨格筋の酸素動態の特性から明らかにすることであった.6名の成人男性に掌握用エルゴメーターを用いて,10%,30%および60%MVCの静的掌握運動を1分間持続させた.その際に上腕動脈,尺骨動脈,橈骨動脈の血管径および平均血流速度の変化を平成13年度に完成した超音波ドップラー装置で得られたデータを高速で処理するシステムを利用して測定した.また,運動時の上腕二頭筋,尺骨手根屈筋,腕橈骨筋の酸素化ヘモグロビンの変化について近赤外線分光装置を利用して測定した.その結果,以下の点が明らかになった. 1.運動強度の増加にともない全ての動脈において運動および回復時の平均血流速度の増加が認められたが,その変化は一様ではなく,上腕動脈,尺骨動脈での変化が橈骨動脈に比べて顕著であった. 2.運動強度にともなう血管径の変化には動脈間での違いは認められなかった. 3.運動強度にともない全ての骨格筋において運動時の酸素化Hbの低下および回復時の増加が認められたが,その変化は一様ではなく,尺骨手根屈筋での変化が他の筋群に比べて顕著であった. 以上のことから,静的掌握運動時の上肢の酸素供給および酸素動態に不均一性が認められ,酸素消費の高い主動筋近位部位に選択的に酸素供給する現象がみられた.これは,主動筋近位部位では筋内圧の増大により,血管床レベルでの閉塞による酸素供給の阻害が生じ,それを補うために回復時に酸素が優先的に供給されたのではないかと考えられる.
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