研究概要 |
前年度に引き続き日中・日韓間の青果物市場に関する資料収集・調査を続けるとともに,得られたデータの分析を進めた。また,その成果は学会発表を経て,目下論文として投稿中である。 本年度の海外現地調査は,13年夏に韓国でおこなった。具体的にはテグ市の青果物市場で1次資料を入手するとともに,近在の農村での調査,ソウル市の研究機関での資料収集である。これらの資料や前年来収集を続けた諸資料を併せて,地図化を含めた分析を進め,中国及び韓国における青果物流動のパターンを描き出すという作業を終え,併せてそのパターンの形成メカニズムについての検討を行った。 得られた知見は以下の通りである。中国の青果物流動パターンについては,季節的な変動をともなうもの,華北地域が端境期を迎える時期にはペキン市を一つの極とした全国的な供給体系がすでに構築されていることが明らかになった。一方,韓国においては消費地の比較的近くに産地が分布し,都市が独自の集荷圏を持っていることが確認された。これは,大産地と大消費地を軸とするわが国の青果物供給体系とも,中国。ペキン市で確認されたそれとも異なるものである。日中韓それぞれに異なる青果物流動の形態が認めちれたわけであるが,その要因として,各国の国内の産地間格差,消費地間格差という2つの地域格差による解釈が有効であった。この格差がそれぞれの国において全国的なスケールでの青果物流動の原動力となっているといえる。この文脈において,3国間に見られる国際的な地域格差が,これら3国の青果物貿易のパターンを形成するといえる。 これらの研究は,経済地理学会西南支部例会(主として中国の事例分析)や人文地理学会(主として韓国の事例分析)などで学会発表を済ませ,現在投稿中あるいは投稿準備中である。
|