【目的】本研究は、平成10年から平成14年の過去5年間にA市近郊のB地域における熱中症発生時の救急車救急搬送データを解析して、熱中症発症に関する対象者及び環境条件などについて検討を行った。【方法】B地域における平成10年から平成14年の各年の6月から9月までの熱中症の発生件数、発生日時、年齢、性別、発生場所などについて調査を行った。救急搬送データに関しては個人のプライバシーに配慮した。熱中症発生時の環境条件は、気象庁のホームページの地上気象観測日原簿より気温、湿度、風速の情報を収集した。【結果】B地域における過去5年間の熱中症総発生件数は60件であり、平成10年11件、平成11年6件、平成12年6件、平成13年13件、平成14年22件であった。性別による熱中症発生件数は5年間で男性44人、女性16人であった。年齢階級別にみた発生件数では、10代14人、20代6人、30代11人、40代5人、50代6人、70代7人、80代5人、90代1人であり、10代の発生件数が最も多く、次いで30代が多かった。発生場所ごとにみた発生件数は、屋外22件、屋内25件、不明(学校関連施設など)11件であった。気温別の熱中症発生件数は、気温29℃代並びに30℃代では1件ずつの発生しかみられないものの、31℃代以降、気温上昇に伴って発生件数も増加傾向を示しており、特に35℃代に最も多く、13件の熱中症が発生している。さらに、屋外での熱中症発生が最も多かったのは気温34℃代で5件の発生があり、屋内での発生が最も多かったのは35℃代で8件の発生であった。熱中症発生時の気温と年齢との関連では、一定の熱中症発生傾向はみられず、さらに性別に関しても気温との関連は示されなかった。
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