研究概要 |
鮮度低下の早いイカ筋肉に対し、「氷温貯蔵」を応用し、イカ筋肉の特徴である"うまみ"と"テクスチャー"を保持しつつ、保存期間の延長を目指すことを目的として実験を行ったところ以下の結果が得られた。 1)イカの外観については,氷温貯蔵個体では冷蔵よりも有意に赤色が鮮やかであり,かつその持続時間は12時間と長かった。このような外観の保持効果は商品価値を決める上での非常に重要な要因となりうる。 2)鮮度低下に伴い軟化しやすい物性については,氷測貯蔵によりその変化を抑えることはできなかった。 3)エキス成分に関して比較した場合,遊離アミノ酸においては顕著な違いがなく,氷温貯蔵の特徴である味成分の変化は認められなかった。しかし,鮮度指標のK値の上昇は氷温貯蔵によって遅れており,K値上昇の原因であるイノシン酸の分解は抑えられているようであった。 4)筋タンパク質の側面からみると,量的な変化は認められないが,不溶性タンパク質の組成に若干の変化が生じた。不溶性タンパク質の多くは構造タンパク質である。これらの量が変化せずに組成が変化したということは,水に対して溶解性が増すほどの分解は受けていないものの,ある程度の分解を受けているために,電気泳動のバンドパターンが変化したと考えられた。 以上の結果から,氷温貯蔵はイカの外観保持・K値の上昇抑制といった,鮮度保持における重要な成果を実現しており,今後のさらなる発展が期待される。
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