研究概要 |
本研究では、モデリングを促進する見方・考え方の育成・社会における数学の役割についての認識をカリキュラム目標として設定し、中学校3年生34名を対象に、討論を重視した指導を根底においた全9回にわたるカリキュラムを考案し実践を行った。第1回目と第9回目は「授業・カリキュラムの評価として、数学の有用性に関する討論とモデリングを促進する考え方のテストを位置づけた。第2回目から第8回目までは、順に「鏡の謎」「グラフ電卓の使い方」「単利・複利」「財産が2倍になる年数」「じゃんけん」「缶詰」「課題選択学習(駐車の問題、リフレクター,テニスのサーブ)」を題材として取り扱った。テストの結果から、一部の見方・考え方(「財産が2倍になる年数」の問題で意図した数学的モデルの正当化の考え等)。については、満足できる結果が得られたが、その他の見方・考え方(「鏡の謎」の問題で意図した条件・仮定を設定して考える意味の理解等)については、満足できる結果は得られなかった。満足できる結果が得られなかった主な原因については、目標で設定した見方・考え方が授業の中で焦点化され、それについて討論されるような授業展開にならなかったことがあげられる。見方・考え方に関する毎回のねらいが、授業の中で焦点化されるような展開を、どのような枠組みで考えていけばよいかが今後の課題といえる。しかし、生徒の事前・事後の記述の分析から、社会における数学の役割についての認識に関しては、事前では約1割の生徒しか社会における数学の役割について記述できなかったのに対し、事後では7.5割の生徒がなんらかの形で記述できるようになった。社会における数学の有用性の感得といった視点からは、全9回にわたるカリキュラム実践が有効であったことがわかる。
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