研究概要 |
計算機により数値計算を行う際に発生する誤差を考慮し,数学的に厳密な意味での解の誤差を検証することにより,得られた解の精度を保証する研究が,精度保証付き数値計算と呼ばれ近年活発に行われ,成果を挙げている.例えば線形連立方程式に関しては,IEEE標準754にもとづく浮動小数点演算を用いることで,n次元の方程式に対して2n^3/3の計算量で方程式の近似解を求めさらにその精度保証を行える,高速精度保証法が提案されている. 非線形方程式f(x)=0に関しては,解の存在を示す手法として,Krawczykの方法と呼ばれる有効な手法がある.この手法は,区間包囲による精度保証技法の代表的なものであり,導関数f´の区間包囲を利用し,簡易ニュートン反復に対して縮小写像の原理の成立を確かめる手法である.本研究は,このKrawczykの方法を用いて非線形方程式の解の存在検証を行う高速な精度保証付き数値計算法を確立することを目的として進めてきた. Krawczykの方法により非線形方程式の解の存在検証を行う場合,解の存在検証を行う領域XからKrawczyk作用素K(X)を計算し,K(X)⊂Xの成立を確認することにより,解の存在性が示される.このとき,K(X)の計算には(行列)×(行列)の計算が現れるため,計算量が増大する原因となる.そこで,これを避けるために,ある行列Lを掛けたLK(X)を計算することにより線形連立方程式に帰着させ,これを前述の高速精度保証法により計算し,K(X)の値を求める.これにより,IEEE754にもとづいた浮動小数点演算を用いて精度保証を行うことにより,Krawczyk作用素K(X)をそのまま計算した場合の計算量が5n^3であるのに対し,本研究での手法では2n^3/3の計算量で済むことが示された.また,この手法を数値計算パッケージMatlabを用いて実装し,具体的な非線形方程式の解の存在検証を行い,その有効性を確認した.
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